1:静脈点滴
2:腹膜透析
3:食道チューブ
4:胃瘻チューブ
老猫健康チェック
+++++ 老猫の健康を守るのは、注意深い日々の観察から +++++

ずぅちゃんの胃ろうチューブ by kobaさん
何らかの理由で自分ではご飯が食べられなくなってしまった場合の選択肢のひとつ、胃ろうチューブ。外部からチューブを取り付けるため、強制給餌のストレスが本猫も看護するものも大幅に軽減されます。
(このほかチビちゃんの食道チューブや一時的に行う経鼻チューブなどがあります。)
ずぅちゃんは悪性腫瘍による口腔内疾患のためご飯が食べられず、食欲があるのにいつも空腹の状態でした。腫瘍そのものの治療(外科的治療、抗がん剤、放射線治療など)は負担が大きく20歳のずぅちゃんには困難な状況でした。それでも一縷の望みを持って大学病院へ。腫瘍そのものへの治療は適いませんでしたが、そこでネット上の診療所*1へ相談した際に教えてもらった胃ろうチューブ(カテーテル)の装着ができないものか提案しました。ずぅちゃんには厳しいのではと難色を示した先生もkobaさんの希望を聞き入れ、その場で装着手術が決定となりました。急な展開に実はkobaさん本人が大きく揺れ動いていたのです。老猫のQOLの維持を目的に、ずぅちゃんが麻酔から覚醒しないリスクを覚悟のうえで決意し、祈りが通じ無事手術は成功しました。ずぅちゃんは頑張りました。
(その手術の様子はkobaさんの日記に詳しく記録されています。11月11日が初めての大学病院の受診日であり緊急手術の日でもあります。)
若い猫さんの場合には、経口と同様の栄養を十分に摂取しながらさらに根本治療の道を選ぶということも可能となります。体力を極度に消耗してしまう前に検討してみる価値があると思います。ずぅちゃんの場合は腫瘍検査のために主治医から紹介された2次医療の大学病院にて手術を受け、退院後は再び主治医のケアを受けるという治療態勢でしたが、胃ろうチューブの装着そのものは一般病院でも可能なようです。またずぅちゃんは痩せてしまっていたためチューブが定着しにくいとのことで、経過観察を含めた5泊の入院となりましたが、問題が無い場合は当日の入院だけで済むそうです。
以下kobaさんのレポートです。
*1 kobaさんが相談されていたのは、老猫介護のリンク集2の一番最初にあるP−WELL内のひよこ診療所のにいあ先生です。にいあ先生の回答はとても分かりやすい語り口と、なにより動物に対する愛情にあふれています。にいあ先生の小さなアドバイスの数々はきっと猫と暮しているに違いないと思わせるものがあります。残念ながらこの相談のログはサーバーの事故で消失してしまって残っていません。

◆給餌に慣れるにつれ、時間になると自分から食べたいと催促するようになります。◆
ご飯の後は、お腹も満たされて とても幸せそうな顔をしてくれました。
給餌の用意をしているとそわそわしだしたり、準備ができて呼ぶと一目散に膝に飛んで来たずぅちゃん。 給餌の後。
お腹も満たされてとても幸せそうな顔をしているずぅちゃん。

胃瘻チューブ装着での在宅療養

1.チューブを固定する(安全確保)・・・専用のお洋服でQOLもアップ
身体から外に出ているチューブを身体に密着させるためにテープで固定しています。処置後の入院中には、固定テープの上からさらに身体全体にネットをしていました。前足、後ろ足用、に穴を開け しっぽを出す穴までありました。入院中少し下痢気味でしっぽの下のネットが汚れること、ずぅの運動量が少ないことから退院時には、固定テープを巻いた部分のみネットをしました。
(運動量の多い若い猫ちゃんには、固定テープがずれないようにチューブがどこかに引っかかり外れたりする事故がないように配慮しなければいけないようです。固定テープは胃瘻チューブの処置をしている間はずっと付けていなくてはなりません長く使用する場合は、テープによる、かぶれなどにも注意が必要。)
固定テープ部分だけにネットをするのは、本猫にはストレスがあるようには見受けられませんでした。テープは見た目にはきっちり巻いてあるようですが、伸縮性のあるテープなので苦しくはなかったようです。動いたり、眠ったりの日常生活に支障はありません。ただ、ガーゼ交換の時はテープを全て剥がし巻きなおさなければならないので、毛に張り付いたテープを取るのが痛そうでした。毛に粘着しているテープを濡らしながら剥がすとわりと楽に取れるようでした。
胃瘻チューブを付けている猫ちゃん専用に洋服を作ってくれるサイトで作ってもらいました。『犬の洋服屋さん  オーダーの店 』
値段は一着 2,500円くらいです。 デザインは希望を聞いてくれます。複雑なものになるとお値段も少し高くなります。手先の器用な方はサイトを見本にして手作りするのもありだと思います。首の後ろ側、肩甲骨の辺り マジックテープまたはスナップ留め 頭を通して被せるようになっています。背中やお尻側にポケットが付いてチューブを通す穴が開いています。そこからチューブを通しポケットにチューブを収納、給餌の時にはポケットからチューブを引っ張り出します。
2.給餌の準備(主食はリーナルケア、道具はシリンジ)
1日の食事の量はリーナルケアを180mlです。これを4回にわけて、1回につき45ml給餌します。そこで25mlのシリンジを2本準備。さらに水分の補給とチューブ内を洗う(フラッシュ)ために4mlの水(普通の水道水です)と感染予防の為の抗生剤1ml。これが1回に行う強制食餌のすべてです。
写真右から 25ml入りリーナルケア・20ml入りリーナルケア・水分(フラッシュ)抗生剤
薬や水分は常温でしたが、リーナルケアは電子レンジで人肌かそれより低いくらいに温めていました。シリンジは病院で申し出ると、タダで譲ってくれました。何回か使用するとシリンジの滑りが悪くなるので定期的に交換が必要です。シリンジは、医療用具になるので個人では廃棄できないので病院に持っていき捨ててもらいました。
リーナルケアや他の流動食を吸い上げる時、シリンジに空気が入らないように注意します。入ってしまった場合には、空気までチューブに流し込まないようにします(最後の一押しを止める)。空気が胃に入ってしまうと嘔吐やゲップの原因になりますので、空気まで流し込まないことが大事です。またあまり早く流して(給餌して)しまうと、満腹感が一気に襲い気持ち悪くなったりするようです。シリンジを押す強さは、流動食が流れ落ちる雫が、「一滴一滴」 数えられるくらいの速さです。事前に一度力加減を練習してみると良いでしょう。ただし「水」はリーナルケアの時とは違いチューブに残った流動食を押し込むように勢いよく入れます。傷口をどうこうするものではないので、あまり神経質になることはありませんが、給餌の際、給餌後にはシリンジ先端、三方活栓の入り口をコットンに含ませたエタノールで消毒します。
写真は三方活栓のアップです。
チューブの先端には三方活栓というものが付いています。写真は、OFFの状態です。写真の右側の半透明のキャップを外しシリンジの先端を入れグリーンのコックを直角に上側に合わせて(ON)ゆっ〜〜〜くり、注入します。想像より案外スムーズに注入できました。
ネットや洋服のポケットにチューブを収める時、動いたり寝たりする時にデコボコした三方活栓が邪魔にならないように工夫しました。洋服の背中についたポケットの使い道はこれなんです♪

右の写真はずぅコレクションです。

3.給餌する
膝などに抱きリラックスした形で給餌します。
ずぅは、大人しくしていましたので一人で全部出来ましたが、動きの多い猫さんなら慣れるまでサポートしてくれる方がいたほうが、いいかもしれません。ネットからチューブを引き出し、流動食がスムーズに流れるようにチューブがまっすぐになるようにしてシリンジを付け、流し込みます。曲がっていると、圧がかかり押しにくいです。猫は飽きやすいので、シリンジの交換などスムーズに出来るように、あらかじめ用意しておきます。

装着手術後も、定期的に傷口の消毒などの管理のための通院が必要になります。
この様子などもkobaさんの日記に記録されていますので参考になさってください。
胃ろうチューブ装着の長所
☆チューブ径が比較的太いため、現在するほとんどの処方食を無理なく通過させることが可能である。(内径3.2mm)
★チューブの片端が胃壁に固定されるため、嘔吐によってチューブが吐き出されてしまうことがない。
☆内視鏡による装着が可能である(開腹の必要がない。術者と助手が経験を積み手技を習熟すれば10分程度で装着可能)
胃ろうチューブ装着の短所
☆装着時に全身麻酔が必要である。
★胃に病変が存在する患者(胃のリンパ腫や胃癌など)には使用出来ない。
☆胃内容物の腹腔内流出および腹膜炎が引き起こされる可能性がある(極めてまれ)。
(…以上は手術の時に主治医から頂いたプリント引用)

胃瘻チューブとは、30cmくらいの長さのチューブの先を体の側面より胃の部分に直接差し込み胃の中に流動食を注入出来るようにする処置です。わかりやすく簡単に説明すると、30cmくらいのチューブのピアスを胃に穴を開けて付ける…みたいなイメージです。(素人丸出しのイメージですが…)
★術後のケアは術後1週間くらいは毎日チューブ装着周辺の消毒及びぬり薬…その後2〜3日に一回一週間に一回と頻度を減らしガーゼ交換をする。患部の感染防止に抗生物質を投与。(これも水で溶かしたりしてチューブから注入)
☆胃の中にはチューブが抜けないようにキャッチャー(ストッパー)があって、反対側の先端に三方活栓(写真)が付いている。
★そのチューブが抜けたりずれたりしないよう感染防止の塗り薬を付けたガーゼで被った後、伸縮性のあるテープで胃から出た約5cmを固定します。外側に出た残りの25cmのチューブはネットで固定します。またはネットの代わりに専用のお洋服を着せて固定します。専用のお洋服にはポケットが付いていてそこに外側に出ているチューブを収納します。
☆チューブ先端の三方活栓からシリンジを使って、本猫の体重に応じた必要カロリーの流動食を体調など配慮して一日に何回かに分けて与えます。

2004/11/11に処置を受け、5泊6日の入院を乗り越え、ずぅは私の元に帰ってきてくれました。
それから、12/19の急な旅立ちまで、私たちの日々は穏やかに過ぎていきました。
いろいろ迷いもありましたが胃瘻チューブの処置はずぅにとって最善の方法だった…と思っています。

kobaさん

人間の介護の世界でも、口から十分な栄養が取れない方や、飲み込む時に誤嚥してしまう方などに広く用いられている胃ろうチューブ。外科的手術や内視鏡で簡単に取り付けることが可能です。PEGと呼ばれていますので興味のある方は検索してみてください。また食道チューブのチビちゃんの時と同様に必要がなくなれば外してしまうことによって、短時間で傷がふさがり元通りになります。
ずぅちゃんが体調を崩した12月18日の血液検査の結果はBUN140という高い数字でした。
老猫には多い慢性腎不全をずぅちゃんもわずらっていました。トータルケアの重要性を再認識させられる急変でした。これまで食事のたびに口から出血したり、食べられないことによる飢餓感などからは開放されて、ずぅちゃんのQOLは最期の瞬間まで高く維持されていたと思います。ずぅちゃんのご冥福を心からお祈りいたします。

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