ケイタイの時計は7時10分を表示していた。
いいかげん冷えたし、というより寂しくなって、もう鳴いたり喚いたとしても生活音がかき消してくれると判断して戻ることにした。
部屋に戻って、床に広げた新聞を読みながら温めたミルクを置いた。
あ然とした。なんと、カップに顔を突っ込んで音を立ててミルクを飲みだした。
これまでミルクは嫌いで見向きもしなかったはずのmoo。
mamaの混乱に拍車がかかった。
そのピチャピチャとミルクの跳ねる音とmooの荒い鼻息を聞きながら。
これからどうなるんだろう。
その日、papaは会社から何度もメールを送ってきた。
「むーちゃんはどう?」
どうもこうも、まるで腫れ物に触るように一日を過ごしていた。
さすがに疲れたのか、日が高くなってからはベッドを占領している。
食欲もいつもどおり。
ただ、ほとんど眠ってはいない。のぞきに行くと常に目は見開かれている。
声をかけると敵意をむき出しにすることもあった。
また夜になると、別人のmooが現れるのだろうか。どうしたらいいのだろう。
病院にいくことも考えた。
でも、いまあの大嫌いな病院に連れて行くのか。
しかもここでは信頼できる先生が近くにいないというのに。
papaのほうがどっしり構えていて、きっと病気ではないよ、まだ様子を見てみようと言う。
うーんmamaは、それでなくても睡眠不足に弱いAB型のpapaの崩壊を心配しているのに、、、。
その夜はpapaも早く帰宅して、今夜はどうなるんだろうと、話しても答えのない会話を二人でしていた。
どうも独りにして欲しそうだったので、mooにちょっかいを出すのはやめにした。
二日ほどでmooの錯乱は収束した。
その後も落ち着かない日が続いたものの、あの日の朝ほどの混乱はなくmooは過ごしている。
あの日のような奇声をあげることもあって、その度に「始まったか」と胸がキュンとなる。
一ヵ月後にmamaは仕事を辞めて、毎日家にいる生活がスタートした。
これまでほとんど仕事をしてきたので、さぞかしmooは甘えて喜ぶと思いきやそうでもなくmamaは無視されている。
でも、それから落ち着いているのは、やはりmamaがいるからと思っている。
どうmooを見てあげたらいいのか、ネットでも調べたし人にも聞いた。
病気の情報はあってもあんがい呆けの情報はないもの。
それなら自分で集めるしかないかと、失業中のmamaの仕事にすることにしたのだ。
papaは、薬を使ってむーちゃんにおとなしくなってもらう気持ちはないという。(自分では山のように抗生物質をとっているくせに、だ。paapも減らしてね。)
パニックから立ち直ったpapaとmamaは、どうにも生活できなくなったらまた考えるとして、二人でmooの「クオリティ オブ ライフ」を大切に、快適な同居生活を探っていく決心をしたのである。