【 9月の終わりの 長い一日 】


























































その日はこうして突然やってきた。

初めは怪我をして興奮しているにちがいないと思った。

でもそうじゃなさそうで、つい言葉にでたのは

「呆けちゃったの?むーちゃん」・・・顔を見合わせた。

「ま・さ・か」・・・無言。

とにかく、mamaは
電気をつけて明るくしている方が良いと判断して、
papaは明日仕事だからベッドに戻ってと、mooと二人になった。

近所に最も迷惑をかけなさそうな北側の部屋に二人でこもった。
(絶対お隣や上階にも聞こえる大きさの声でした。Mooは基本的にめったに鳴きません。鳴いてもか細いかわいらしい声しか出さなかったはずだった、、、んです。)

しばらく、せいぜい3分も静かにしていると、
廊下、リビングを徘徊し奇声をあげる。またおとなしくなる。

その繰り返しで、思い余ったmamaはケージを取り出してみた。
大嫌いなものを見せて威嚇したつもりだった。全く動じないmooに、
さらにケージに押し込んだらいつものように落ち着くかもと考えた。
(ケージ=病院とストレスの連鎖を覚えているmooはケージに入ると腰が抜けて自分では出てこられなくなるほどケージが嫌いなはずだった)

錯乱してから、1時間が経った。もう6時近い。
近所でも人が起きだして、このすさまじい声を聞かれてしまう。

(ペット飼育可のマンションだが、ルールは厳しい。飼い主同士が規制をして規律を守っている。騒音にも敏感だ。正直ハラハラしだした。)

mooに疲れの気配はない。きっとまだ続く、、、外へ行こう。そう決めた。

二人でそーとマンションを出ると、歩いてすぐの公園へ向った。

なんとmooはケージの中で必死に足を踏ん張り立っているのだ。シンジラレナイ。彼女の中に何が起きているのだろうか。

9月も終わりの朝、初めは誰もいなかったのに、ほぼ時を同じくして公園には犬を散歩させる人、太極拳のグループ、浮浪者と人々が活動を始めたところだった。

ベンチに座って、ケージのドアを開け、視界を広げてあげる。

目を爛爛と輝かせ、息遣いもあらく、時にぐるぐる回りながら、
久しぶりの外の風景を見つめるmoo。

犬を見ても怖がらない。大きなラブラドールが放たれているのには
mamaが怖かった。

紐をつけてベンチの上に出したり、膝にのせたり時間を稼ぐ。
もちろん公園にも奇声を轟かせ。

さすがに薄着のまま飛び出してきたmamaは冷えてきた。

その間に、「おや〜猫ちゃんですか、おはよう」「あら〜家にもねこちゃんいるのよ〜」とご年配の婦人が声をかけて行く。どこでも動物は人をつなぐ。
知らない人同士でも挨拶ができるようになる魔法を持っている。

三人目のご夫人はさすがに怪訝そうに「おはよう。どうなさったの」と声をかけてきた。

さすがのmamaも一気に、事情を話した。
「この子ぼけちゃったんです(そう断言した)。あまりに鳴くのでマンションにいられなくて出てきたんです。」涙がこぼれそうだった。

「それでさっきも変な鳴き方してたのねえ。でも、いいわねえ、ちゃんとこうしてお母さんが面倒見てくれてね」

やさしく言われて、かえって辛くなったというか、悔しくなったというか、mooに腹が立ったというか、まだ現実を受け入れてないmamaはなんと、なんと

「いつまで面倒みられるか分かりません」と言い放った。

ぎょっとしたその夫人の表情は言葉を失っていた、、、。


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